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vie humanite ageギュスターヴ・モロー美術館所蔵 1886年
多翼祭壇画「人類の生」

−上段左から順に追ってみると−
アダム:金の時代・朝・祈り
アダム:金の時代・星・陶酔
アダム:金の時代・夜・眠り

−中段の左から−(ヘシオドスとオルフェウス)
ヘシオドス :銀の時代・朝・霊感
オルフェウス:銀の時代・昼・歌
ヘシオドス :銀の時代・夜・嘆き
−下段−
鉄の時代・カイン・朝・労働
鉄の時代・カイン・昼・休息
鉄の時代・カイン・夜・死



モローが描いたこの「人類の生」(第2作)であるが、、最上部の半円形に描かれているのは、贖い主キリストである。上段がアダム(とエヴァ):金の時代、中段がヘシオドスとオルフェウス:銀の時代で、下段がカイン(とアベル):鉄の時代となる。
次の三作品は、KAFKA ギュスターヴ・モロー からご覧あれ
アダム:金の時代・星・陶酔
アダム:金の時代・夜・眠り
ヘシオドス :(ヘシオドスとオルフェウス)銀の時代・夜・嘆き
金の時代
モローが描いた金の時代。創造主ヤハウェによりアダムとイヴが誕生。命の木からなるアップル(果実のこと)と、善悪の知識の木と呼ばれる禁断のアップル(果実)を区別させたが、エヴァは、その禁断の果実(いちじくの実)を、アダムを誘い、口にする。ヤハウェは、生物の皮を剥ぎ、その皮でアダムとエバの衣を与えてから、エデンの園から追放する。モローのタイトルは「アダム」だけ。

ここでは、聖書の創世記にあたるアダムの創造をモローの祈りに、罪のはじまりを陶酔に、楽園追放を眠りに譬えることもできるのかもしれない。

銀の時代
銀の時代では、吟遊詩人のヘシオドスとオルフェウス(オルフェ)が登場する。ヘシオドスがタイトルに登場して、モローの作品の意図がわかるだろ?

古代の詩人ヘシオドスが、「仕事と日(日々)」で、『人間はかつて黄金時代を楽しんだが、やがては銀の時代(神ゼウス背き、ほろぼされる)、青銅の時代(青銅器を使って互いに殺し合う時代)と退化し、今の人間は忌まわしい鉄の時代(どの時代よりも劣悪)を生きている』と説いたよね。それが、モローの作品タイトルになっているのではないか?

ほら、このヘシオドスの教訓叙事詩「仕事と日」に「パンドラの箱」があったじゃないか。神ゼウスの正義を心棒することが正しく生きることで、背いた罰として人間に与えられた災厄が、パンドラという女性。

ヘシオドスは、このパンドラが箱を開いてから、「五時代説」を説いている。モローの描いた作品に、ヘシオドス自身が「銀の時代」として登場しているが、ヘシオドスは、青銅と鉄の間に英雄の時代をはめ込んで五つの時代区分にしている。また、ヘシオドス自身が生きた時代を「鉄の時代」として、教訓叙事詩「仕事と日」を書いている。

クリックすると、画像が大きくなります。 「アダム:金の時代・朝・祈り」、「ヘシオドス  :(ヘシオドスとオルフェウス)銀の時代・朝・インスピレーション」、「オルフェウス:(ヘシオドスとオルフェウス)銀の時代・昼・歌」、「鉄の時代・カイン・朝・労働」、「鉄の時代・カイン・昼・休息」、「鉄の時代・カイン・夜・死」

このヘシオドスは、モローの「ヘシオドスとムーサ(詩神)」というタイトルの作品で、詩人の誉れを象徴する月桂冠をかぶり、竪琴を手にした姿の後ろに、ムーサが描かれている。「銀の時代・朝・インスピレーション」は、「ヘシオドスとミューズ」にも描かれているように、神々や精霊の宿りと恵みを表現しているのではないか。

ギュスターブ・モロー ガラテア 記事から引用
ギュスターブ・モロー は、「目に見えるものや触れられるものは信じない。心に感じるものだけを信じます。」と言っています。

そのとおりで、モローの描く女性は、神話や物語の女性ばかりである。つまり、神話や物語の女性の裸婦を描くが、実際の女性を描いた作品は、裸婦はない。耽美としないのは、そこが所以であろう。ホイッスラー/(ちなみにホイッスラー 版画、印象派的作品)なんかと、そのへんが違うね。

ie-humanite-age-adam-moreau-gustave


このモローの、「目に見えるものや触れられるものは信じない。」をひっくり返せば、「見えないもの、本当かどうかわからないものをえがく」ということでもあり、ヘシオドスも、口承でのみ伝わっていた神話や神々を叙事詩にしているわけだ。

さて、オルフェウス(オルフェ)は、ギリシャ神話に登場する詩人で、密儀オルペウス教の始祖ともされている。ホメロス著の古代ギリシア叙事詩「オデュッセイア」、古典ギリシャのアポローニオス・ロディオスの叙事詩、「アルゴナウティカ」に登場し、イアソン率いるアルゴ船探検隊(アルゴナウタイ)で、魔物セイレーンや、死んだ妻を蘇らせるために冥界の番犬ケルベロスなどに、「竪琴」を弾き、魅了させて突破していく。

妻を蘇らせるための、「冥界から抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはならない」という約束を破り、最後の別れとなったが、このことで、女性との愛を絶ち、オルペウス教をひろめる。これが、トラキアの女たちの怒りをよび、八つ裂きにして殺されるのだ。この殺されたオルフェウス(オルフェ)を、モローは「オルフェウス(の首を運ぶトラキアの娘)」という作品にしている。

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ここでは、「ヘシオドスとムーサ」ではなく、詩神ムーサの一人であるカリオペの息子で、竪琴の名手の吟遊詩人オルフェウス(オルフェ)とヘシオドスを描いている。

鉄の時代
鉄の時代では、アダムとイヴの子供達であるカインがタイトルになっている。ヤハウェにより、追放されたアダムは、ヤハウェから、勤労することで食べ物を得られるという義務をいい渡され、その子カインも、畑仕事が日課となる。カインは、ヤハウェの捧げものに、額に汗をかきながらつくった「地の作物」をささげ、弟のアベルは「子羊」をささげた。ヤハウェは、「正しい」か「正しくない」かを、その捧げものから判断したのだ。つまり罪を覆うために血を流さなけえればならない「子羊」を献上した弟アベルを「正しい」と見抜き、人間の力と知恵をもちいた作物を「正しくない」としたわけだ。そうして、史上初の殺人が起こる。カインは弟アベルを殺すのだった。

そして、最上部の半円形に描かれているキリストは、血を流しているんだ。

これは、罪を解決する「血を流す」という神の教えらしい。イエス・キリストの十字架はまさしくそのためで、人々の罪はイエスの血によって覆われたということなのだ。

「アダム(黄金時代)」は少年期、「オルフェウス(白銀の時代)」は青年期、「カイン(鉄の時代)」は壮年期と、そのまま人生の3段階と解釈してもいいんだってさ。


もうひとつの人類の生


Christ rédempteur






2005年のギュスターヴ・モロー展 はこっちのほう?

そのほか
ギュスターヴ・モロー「キマイラたち 悪魔的なデカメロン」
ギュスターヴ・モロー アフロディテ(アフロディーテ)
未完のようなサロメ そしてエボーシュ
ギュスターヴ・モロー 歌舞伎役者/「詩人と聖女」
ギュスターヴ・モロー 「歌舞伎の女形二人」
ルドンのオルフェウス モローのオルフェウス
ギュスターブ・モロー 6枚のサロメ
ギュスターヴ・モロー 「サロメ」年代不詳
「大皿にのせたバプテスマのヨハネの頭をはこぶサロメ」(個人所蔵)
「サロメの舞踏」 1876年頃 水彩 メナード美術館所蔵
「踊るサロメ」(刺青のサロメ) 1876年頃 モロー美術館
「踊るサロメ」 1886年 水彩 ルーブル美術館
「ヘロデ王の前で踊るサロメ」 1876年 モロー美術館

ギュスターヴ・モロー サロメ
「サロメ」1875年 モロー美術館所蔵
「ヘロデ王の前で踊るサロメ」 1876年 アーマンド・ハマー所蔵
「出現」1876年 水彩 ルーブル美術館所蔵
「出現」1876年 油彩 モロー美術館所蔵
「牢獄のサロメ」東京国立西洋美術館
「サロメ」 年代不詳 モロー美術館
「サロメの舞踏」年代不詳 モロー美術館
「庭園のサロメ」1878 個人蔵

ギュスターヴ・モロー サロメ
「エチュード(習作) サロメ」(部分)
「ジョン=バプティストの斬首」 / 「サロメ」
「エチュード サロメ/レダ」(部分)
「エチュード ジョン=バプティストの斬首のサロメ」
| ギュスターヴ・モロー | 20:45 | trackbacks(5)
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