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アラン・ドロンの黒いチューリップ
アラン・ドロンの「黒いチューリップ(La Tulipe noire)」も、僕が幼少の頃、TVの「洋画劇場」でみた作品。音楽はジェラール・カルヴィ(Gerard Calvi)が担当した。
Alain Delon & The Second Waltz
なんだけど、なんとショスタコーヴィチ(Dmitrii Dmitrievich Shostakovich)のジャズ組曲第2番第2ワルツと組み合わせた動画。
sai 記事
ショスタコーヴィチ ジャズ組曲から アンドレ・リュウの第2番第2ワルツ The Second Waltz
うーん、「黒いチューリップ」との時代とは違うが・・・、スターリンからフルシチョフ時代への過渡期のこのワルツ。でもアラン・ドロンには似合うかも。
「三銃士」でお馴染みの小説家アレクサンドル・デュマ・ペール(大デュマ)の作品に「黒いチューリップ」がある。史実を忠実に調べ、その中にフィクションを織り込むデュマの小説。
そういえばsai のコメントに「〇〇さんの小説の登場人物は実在ですか?」ってあって、sai はだいぶキレまくっていたが(大笑い)、ちゃんとした本も読んでいないで、それってないだろうってね。
実在しているから、その小説のネタはノンフィクションかっていうとそうじゃないし。この映画は、デュマの作品を原作として、さらに別な物語になっている。
史実とデュマの小説「黒いチューリップ」と映画「黒いチューリップ」の共通の実在した人物は、デ・ウィット兄弟。
コルネリス・デ・ウィット(Cornelis de Witt )の寓意画
コルネーリス・ビスホップ(Cornelis Bisschop)
この映画は、デュマの作品を原作として、さらに別な物語になっている。史実とデュマの小説「黒いチューリップ」と映画「黒いチューリップ」の共通の実在した人物は、デ・ウィット兄弟。兄のコルネリス・デ・ウィット、弟のヨハン(ヤン)・デ・ウィットは、無総督時代のネーデルラント連邦共和国の最高の地位にあった。
ヨハン(ヤン)は、政権の最高指導者。デュマ(大デュマ)は、この兄弟が名付け親になったという設定の主人公コルネリウス。
オランダの「貪欲なフローラ(花の女神フローラ)に貢ぐ愚か者たち」といわれた、チューリップ・バブルの暴落と混乱を織り交ぜながらの筋書きだから、主人公は黒いチューリップの品種開発をする園芸家。
虐殺されたデ・ウィット兄弟に加担したという罪で死刑宣告されるが、終身刑におさまり、牢獄の獄吏の娘に黒いチューリップの球根を手渡し、最後はハッピーエンド。
デ・ウィット兄弟の時代は17世紀。フランスがルイ14世、オーストリアはマリー・アントワネットの母、マリア・テレジアの父皇帝カール6世、英国はチャールズ2世、プロイセンはフリードリヒ2世、スペインはフェリペ4世、カルロス2世で、スペイン・ハプスブルグ家の断絶への過渡期。
イングランド王ウィリアム3世(ウィレム3世)は、オラニエ公・ナッサウ伯で、デ・ウィット兄弟の虐殺後にネーデルラント連邦共和国統領になる。
オランジュ(オラニエ)公の家系であるオラニエ=ナッサウ家。ウィレム3世の父フレデリック・ヘンドリックの時代には、ルーベンス、レンブラント、ピーテル・デ・ホーホ、ヘラルト・テル・ボルフ(ヘラルト・テルボルフ)、サミュエル・ファン・ホーホストラーテンらの作品には、オラニエ公やデ・ウィット兄弟にゆかりのある作品や、学問の発展、当時の風潮、政策の作品などがある。
オランダの繁栄と衰退は、フェルメールと同時代の画家たちが活躍した「オランダ黄金時代の絵画」にそっくり凝縮されている。
この画家たちのなかにも、「貪欲なフローラに貢いだ愚か者たち」がいる。
デ・ウィット兄弟虐殺後の1647年、ホーホストラーテンの作品
この時代のヨーロッパの絵画芸術では、フランスはジャン・ノクレやピエール・ミニャール、ル=ブランとか?、オーストリアはマルティン・ファン・マイテンス、アンドレアス・メラー。
英国はトマス・ゲインズバラ、ジョシュア・レノルズ、プロイセン(ドイツ)ではアントン・グラーフとか?、スペインではディエゴ・ベラスケス、フランドルのヤン・ブリューゲル、そして各国をめぐったスペイン領ネーデルラントのルーベンス。
音楽はモーツァルト、バッハ、ヴィヴァルディなんか。文豪にはドイツのゲーテ、英国にミルトンや作家はフランスのモリエールが一世風靡。啓蒙思想をひろめた思想家たちには、ヴォルテールやルソー、百科全書派のダランベールにドゥニ・ディドロ。
あー、だから映画の怪盗「黒いチューリップ」の愛馬がヴォルテール。ベタ・・・。
頬に傷のある兄ギョーム、右がジュリアン
映画「黒いチューリップ」は革命を控えた18世紀のフランスになっているから、もう少しあとの時代なんだけど、民衆の力で指導者を殺すところは、フランス革命も、このデ・ウィット兄弟も同じ運命。
デ・ウィット兄弟の私刑の絵画作品(画:ヤン・デ・バエン Jan de Baen)
ここでは、貴族ギョームとジュリアンの兄弟。同じ貴族や金持ちから、財宝を奪う怪盗「黒いチューリップ」が兄のギョーム。貴族っていうよりも義賊。デ・ウィット兄弟の「兄弟」という設定のみ共通で、あとは脚色。
この兄弟をアラン・ドロンが二役を演じる。
これは、「娯楽映画」であって、「名画」ではない。そこがまたいいかも。アラン・ドロンの「ゾロ」もそうだし。社会主義的なもの、芸術的な映画、感動ものなんてのと違う、根っからの「娯楽映画」で、面白い。
ギョームの処刑に集まる宿敵
だが、セリフやライフスタイル、その歴史の背景なんか、結構気楽に楽しめて、かつアラン・ドロンの美的男子に、男ながら魅入ってしまう。剣をふるうところなんぞ、「三銃士」を想像。
黒いチューリップ
La Tulipe Noire (1964) シーンカット版
こういう感じの映画アラン・ドロンの「黒いチューリップ」は、時代も歴史もデュマの原作も関係なく、アラン・ドロンがかっこよく、そして鑑賞側が「面白かった」で終わっちゃう。
この怪盗「黒いチューリップ」のペンダントと剣が欲しかったwa。子供の頃ね。
で、僕はギョームの方が好き。さて、そろそろ「ゾロ」へ。「黒いチューリップ」も「ゾロ」もそうだけど、アラン・ドロンは誰かのなりかわりになる筋書きがいっしょだ。
新総督ミゲルになりすますドン・ディエゴ
Zorro part 1 Zorro part 2 Zorro part 3
Zorro 4 Zorro 5 Zorro 6 Zorro 7 Zorro 8
Zorro 9 Zorro 10 Zorro 11 Zorro 12 Zorro 13
ジョンストン・マッカレーの、1919年の小説「カピストラノの疫病神(The Curse of Capistrano)」の第4作目は「The Sign of Zorro」と改題。
賢い犬リリエンタールではなく、賢い犬フィガロ?だっけ?
小説では、大富豪の息子で怠け者のドン・ディエゴが、実は「怪傑ゾロ」の正体。
ゾロはは狐の意味。
黒いマントとマスクに帽子は、1920年にダグラス・フェアバンクス主演で製作され大ヒットした無声映画「奇傑ゾロ」の定番。
正義を説く修道僧フランシスコを裁く、ウエルタと結託した悪徳判事の裁判
ニュー・アラゴンの新総督ミゲルは剣の達人ドン・ディエゴの親友。ところがミゲルは暗殺され、ディエゴは復讐のため、総督ミゲルになりすます。
ニュー・アラゴンでは、護衛兵隊長ウエルタ大佐は軍隊を率いて圧政、横暴三昧。
黒馬、黒装束、黒覆面の騎士が現われた。剣できざむZの文字。
「ルパン三世カリオストロの城」(1979日)のクライマックスシーンは、アラン・ドロンの「ゾロ」へのオマージュとして捧げられている。
映画「アメリ」では、八百屋の店主コリニョンを悪戯で成敗するシーンで使われている。
Zorro Is Back (Oliver Onions) 「アラン・ドロンのゾロ」 から 《ゾロのテーマ》
「ルパン三世カリオストロの城」のラサール・ド・カリオストロ伯爵は、このスタンリー・ベイカー演ずるウエルタ大佐がモデルではないかと。
カリオストロ伯爵の方がスマートで長身で洗練されている気はするけどね。
映画「黒いチューリップ」も、この「ゾロ」でも、登場する動物たちは賢い。隠し扉を開く賢い犬。そして脇役の魅力は、「黒いチューリップ」よりも「ゾロ」だ。
妖艶な?前総督夫人と絵画コレクション、銀器をつめさせる場面など、キャラクターがはっきりしてわかりやすい。
ドン・ディエゴに尽くす言葉が不自由な従僕ベルナルド
ベルナルドは、言葉がうまく話せない障害があるが、頼もしい青年。この映画に欠かせない人物。ゾロが愛馬に乗って逃げ切るシーンがあるが、あれ、馬から落ちたよってところが、実はベルナルドだったわけ。
誠実で、賢い黒犬(フィガロ)と同様に、とても機転がきく。
フィガロって犬、もしかしたら、別の「ゾロ」にでてきた名かも。とにかくどちらも「娯楽映画」で、このゾロはアラン・ドロンの企画によるものだったのだ。