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ここは2階。モローの部屋なんだけど机の後ろにある鏡。つまり向かえの壁にかかった作品が写ってる。 つまりその鏡に写った作品は左右逆。
さて、鏡の左上の角にあるのが、僕が以前に紹介したボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」の模写である。KAFKAにアップしてもらった画像。やったー!
過去記事 「サンドロ・ボッティチェッリ&ギュスターヴ・モロー」
これは角度によって写らない。それを写したのは至難ではないが、面倒だった。
そして次に気に入ったのがこのチェスセット。ベッドの横に置いてあった。変わったチェスセットをコレクションしているが、あるとき職場の仲間から「アリスのチェスセット」をプレゼントしてもらったが、どうよ、この大人の僕に・・・。
いいな、このチェスセットほしいな。モローの使用したチェスセット。
さて本題。いくつか撮影したなかで、結構うまくとれた部分を紹介していく。今回はテキストリンクからの画像も多くしている。
3階。左からわかるものだけ、旅する詩人、ヘラクレスとレルネのヒュドラ 、アリアドネとテーセウス(Ariadne and Theseus)、キマイラたち(3枚目のキマイラたち)。そしてタルクィニウスとルクレツィア(Tarquin and Lucretia)、ちょっと見えるのはオルフェウス(orphee)。
左下から世界を照らしに行くために父アポロのもとを去るミューズたち(Apollo and Muses 1868)、テスピオスの娘たち(The Daughters of Thespius)、ヘシオドスとミューズたち(Hesiod and the Muse 1860)、メッサリーナ(Messalina 1874)。そして東方三博士の礼拝になる。このみえないところに「プロメテウス」と「神秘の花」。
プロメテウス 彼の禍は記事「パンドラの箱」から
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
神秘の花
そしてヘシオドスとミューズたち、メッサリーナの前にあるのが「エボーシュ(下絵)」、となりは、「6つのスケッチのコンポジション」というタイトルでいいかな。
この部屋の右側の壁がきれているけれど、下記記事からどうぞ。
記事 モロー美術館 Musée national Gustave-Moreau
テスピオスの娘たち(The Daughters of Thespius) 1853
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
ヘラクレスの12の偉業ではないが、エピソードとして、テピウスが自分の50人の娘と歓待したところだ。「獅子退治」に赴いたときのこと。ついでにテピウスの娘たちのことを「ダナイデス」とよぶ。
記事 ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス ダナイデス
シャセリオーの「テピダリウム」にあわせた縦長が上下に拡大された。その縦長にあわせたデッサンが次。
モローはこの作品に長い解説を加えた。以下は喜多崎 親から引用。
「生殖への、創造力への賛歌。ヘラクレスの後ろの二本の石柱は、太陽と月とを戴き、どちらもおのずから牛頭とスフィンクスによって象徴される。この生と創造との二つの極点は共に両性が常に示されている二元性の標徴なのである。」
この作品と)、ヘシオドスとミューズたち(Hesiod and the Muse 1860)の左右にあるのが、世界を照らしに行くために父アポロのもとを去るミューズたち(Apollo and Muses 1868)とメッサリーナ(Messalina 1874)だ。
世界を照らしに行くために父アポロのもとを去るミューズたち(Apollo and Muses 1868)
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
メッサリーナ(Messalina 1874) 腕輪をしている作品もある
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
「父アポロのもとを去るミューズたち」のうえにあるのが「旅する詩人」になる。
旅する詩人
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
メッサリーナの上にあるのが、タルクィニウスとルクレツィア。
ルクレツィア・ボルジア(Lucrezia Borgia)の話しも有名だけど、あのもう一人のルクレツィア(ルクレティア Lucretia)のほう。そこにいる男は伝説では最後のローマ王ルキウス・タルクィニウス・スペルブス(Lucius Tarquinius Superbus)でこれから陵辱(犯す)する場面だろうか
タルクィニウスとルクレツィア
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
ルクレツィアは自害し、その死でタルクィニウスは反旗を翻したルキウス・ユニウス・ブルトゥスによって追放される。シェイクスピアのマクベスの台詞にもタルクィニウスの名がでてくる。
「狼の遠吠えの合図で、密やかに忍び寄り、 陵辱に向かうタルクィニウスの勇んだ足取りのごとき、亡霊のように獲物に近づいていく。」
ルクレツィアの寝所に忍び込んだタルクィニウスの場面。
東方三博士の礼拝
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
モロー美術館の4階は「人類の生」が中央に掛かっていてその左右にある入り口が二つ。そこから出入りして続きの部屋になっている。「人類の生」に向かって左側の入り口にサロメ、「出現」があり、「人類の生」の背中あわせの壁には「ジュピターとセレメ」がかかっている。反対側の入り口には縦長の「レダ(レダと白鳥)」だった。
僕の過去記事 多翼祭壇画「人類の生」
kafka ギュスターヴ・モロー
この室内の左には、またサロメ、その斜め上がヴェニス(ヴェネチア)、前方の左にはガラテアがある。
ジュピターとセメレー(ユピテルとセメレ) Jupiter et Sémélé
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
ガラテア(記事最後)の左隣の作品が「放蕩、あるいは淫乱」(Debauche)。サロメは下段の左から3番目(ヘロデ王の前で踊るサロメ )もそうで、その左がソドムの天使、右にはパルクと死の天使。サロメに関してはどちらの作品(サロメ、ヘロデ王の前で踊るサロメ 1876年)も下記記事に掲載されている。
ギュスターブ・モロー 6枚のサロメ (最近7枚になったらしい)
そしてモローの自画像。ちなみに自画像の真後ろにある作品はピエリデス(ピーエリデス The Pierides 1880-85)。
このフランスの画家モローは、英国ラファエル前派のロセッティ同様に、自分の作品解説を残している。
落語のオチの説明、あるいは洒落やジョークの説明をされているような感じもするけれど、他人ではなく自分のために描いた作品とする強い思いがあるんだろう。
過剰な作品への愛着がわき、サロンに出品せず手元に置いた作品がかなりあるらしい。
モローの肖像画の後ろには次の作品がある。
「Automne」 ディアネイラを略奪するネッソス(ケンタウルス)
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
パルクと死の天使 1890
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
キリストの磔刑(Crucifixion of Jesus)
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
Gustave Moreau Sappho モロー サッフォー
簡単に壁に掛かるものをサラッと紹介したが、正直いうと繊細さに惹かれはするけれど、あんまり面白いって感じなかった。
モロー美術館で好きなものはキマイラたちとレダと白鳥。それからテスピオスの娘たち、求婚者たち。そしてアンドロメダ。それから「声」とか。
サッフォーなんかはあんまり興味なし。興味はないけどこの2点だけはアップ。
サッフォー(岩の上のサッフォー)
サッフォー(海に落ちるサッフォー) モロー美術館
紀元前6世紀の女流詩人サッフォー。レズビアンといわれている彼女は、伝説のなかでの死においてはファーオーンという青年に失恋し、レウカディアの岬から身投げしたという説がある。
モロー
「我がサッフォーには、巫女、それも詩的な巫女の神々しい人格を望んだ。サッフォーの装束は優美と厳格、詩人の最も大きな資質である多様性、すなわち想像力の理念を精神のなかに呼び覚ますようにした。」
つまり神と人間の橋渡しのような存在。サッフォーの死の装束は、まさしくふさわしいと思えるような天女の姿だと思った。これだけは好きだ。
Gustave Moreau Anges suivant les Rois mages モロー 東方三博士の礼拝
東方三博士の礼拝
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
ベツレヘムの星にむかって小さく後姿が描かれている東方三博士。空を飛ぶのは天使なのかなんなのか。
Gustave Moreau Naissance de Vénus モロー ヴィーナスの誕生
楓にナイショで。ギュスターヴ・モロー ヴィーナスの誕生。
ヴィーナスの誕生
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
この手がさ、怪物みたいなんだ。4階の「ジュピターとセメレー(ユピテルとセメレ)」がかかる壁面に、神罰を与えられ牡牛に恋する「パシパエ(パシファエ)」があったが、その腕とそっくり。なにか手の先に怪物の頭でも描きたかったかのように曖昧。
こんな感じ。なんか手というか腕が嫌いだ。パシッと叩かれそうだ。
Gustave Moreau Venise モロー ヴェネツィア
ヴェネツィア
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
獅子に羽が生えているが、水の都ベニスを題材にしたモロー。モロー自身の解説によると、「自らの優美と栄華と沈黙の夢に従って、有翼の獅子の背中にもたれ、気高き女王は自らの過去の栄光と不滅の勝利との思い出に甘美にまどろんでいる。」
この女は共和国ヴェネツィアの擬人像らしい。有翼の獅子は聖マルコを象徴し、背後にはサン・マルコ聖堂がそびえている。
ヴェネツィア
ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau) Musée national Gustave-Moreau
写真の一番うえ(サロメのななめ上)にかかる「ヴェネツィア」。楓はこのヴェネツィアをたいそう気に入って、何枚か掲載しているので、どうぞ眺めてやってください。
さてこの有翼の獅子、その聖マルコ。828年以降ヴェネツィアのシンボルとなるが、聖テオドーロが守護聖人だったはずが聖マルコになった。遺体を盗んだとか買い取っただとかあるけれど、そういうわけで四人の福音史家の一人を守護聖人とすることで、格づけしたかったんだろう、国家のね。
モローが好きかって?
わかりません。
さっき書いたとおり「モロー美術館で好きなものはキマイラたちとレダと白鳥。それからテスピオスの娘たち、求婚者たち。そしてアンドロメダ。それから「声」とか。」
まぁ、みんなの記事見てきて、おっ!と思ったものといったら
自分の記事 テスピオスの娘たち
あとは人類の生、サッフォー(海に落ちるサッフォー)かな。好きというより印象に残ったもの、そんな感じ。
旧約聖書「創世紀」 レヴィ=デュルメル イヴ(エヴァ)
レヴィ=デュルメル イヴ 1896年
リュシアン・レヴィ=デュルメル(Lucien Lévy-Dhurmer, 1865-1953)は、ほんと「オフィーリア」、「サロメ」の作品でも有名。文学や聖書の語り継がれる女性ではイヴを描いてる。結構官能的に。
奇怪な幻想を描いている画家で、イヴがちょうど蛇に知識の木の実、あの「禁断の木の実」を、大蛇が唆す場面。
レヴィ=デュルメルはこうした旧約聖書「創世紀」や神話、文学などの場面を描いている。
レヴィ=デュルメルは必ずストーリー性を重要視したフランス象徴主義の一人らしいが、アール・ヌーヴォー期にはその時代にふさわしい世紀末芸術の作品を残していた。
レヴィ=デュルメルのサロメよりこっちのほうがいい。ちなみに「オフィーリア」はこちら。
記事「シェイクスピア「ハムレット」から 愛しのオフィーリア」
聖書の世界 から レヴィ=デュルメル 「聖アントニウスの誘惑」
聖書に置ける預言者や聖者のひとり、聖アントニウス。
ミルトン 「失楽園」から レヴィ=デュルメル 「エデンの園」
シャルル・ボードレールがミルトンの「失楽園」から解釈したレヴィ=デュルメルの「エデンの園」が次の作品。
レヴィ=デュルメルの作品をご紹介するには、オリジナルの美しさが表現されているものが少なく、なかなか記事に及ばなかった。今回ようやく近い色彩の表現されている画像が手にはいる。
この三連画「L'Eden(エデンの園)」は左から「émoi(興奮)」、「Passion (情熱)」、「Regrets (後悔)」という、エヴァが木の実を手に取るシーン、アダムに木の実をすすめるエヴァ、そしてエヴァの後悔、あるいは神から追放を言いわたされたときの後ろ姿かも。
レヴィ=デュルメルは水、死、憂鬱をオフィーリア・コンプレックス、オフェリア幻想の風潮をあわせて描いている一人にも見える。そうした風潮よりも文学性をレヴィ=デュルメルは強調しているよう。
マラルメ 半獣神の午後(牧神の午後)から レヴィ=デュルメル 「牧神の午後」
レヴィ=デュルメル Après-midi d'un faune
バレエでも有名な「牧神の午後(Après-midi d'un faune)」。ステファヌ・マラルメ(Stéphane Mallarmé 1842-1898)の「半獣神の午後」にオマージュとしてドビュッシーが「牧神の午後への前奏曲」を作曲。そうしてニジンスキーのバレエでは「性」を表現したものになった。(ニジンスキーの自慰シーンがね)
こうした詩、音楽、舞踏の「牧神の午後」は絵画作品に及ぶ。レヴィ=デュルメルの「牧神の午後」を1909年のサロン展に出品。
半獣神バーンと二人のニンフ。官能的な物語。
ひとり言
クレマン・メシエ レヴィ=デュルメル
花瓶「庭師」 メトロポリタン美術館
レヴィ=デュルメルはクレマン・メシエとパリ万博で「金賞」を受賞したというのがこの花瓶「庭師」。装飾家としても活躍していたらしい。
記事 「レヴィ=デュルメル」
英国でのラファエル前派と同じ時代で、同じオフィーリアなんぞ描いた画家レヴィ=デュルメルだが、世界が違う。やっぱフランスはココ・シャネルが風靡した時代で、ラファエル前派のモリス夫人のファッション性と違うように、絵画や文学性も違うなって感じた。
中世時代をこよなく愛したラファエル前派を追うようだが、フランスの画家だよねって感じ。
レヴィ=デュルメルのモナリザ 「秋の花嫁」
The Autumn Bride (Portrait of Marguerite Moreno)
circa 1896
The Bowes Museum
エドワード・バーン=ジョーンズ(1833-1898) へのオマージュ「秋の花嫁」(マルグリット・モレノの肖像画)は1896年の作品。何のオマージュ?なんで?
レヴィ=デュルメルはレオナルド・ダヴィンチを意識して、彼の立体感に近づくために点描画などで工夫を凝らしたよう。三連画、牧神の午後などもその技法を使用していたといわれているが、この「女優 マルグリット・モレノの肖像画」は、レオナルドの「モナリザの微笑み」をイメージしたといわれている。
1895年のイタリア旅行でルネサンスの芸術に触れてからだと思われる。そしてトルコやペルシャのオリエンタルな旅。
この「秋の花嫁」の背景には、クリムトのように金をつかっている。クリムトもラヴェンナの旅行から金やモザイクに感銘を受けた。
リュシアン・レヴィ=デュルメルの作品
レヴィ=デュルメル Lucien Lévy-Dhurmer
掲載作品 死都ブリュージュ(死んだ女性)/連作 死都ブリュージュ7作品/ロダンバックの肖像画/ル・ヴォワル/ウィステリアダイニングルーム/花瓶「庭師/サッポー
リュシアン・レヴィ=デュルメル
掲載作品 青いドレープ(青い布)/キャルリエ嬢(カルリエ嬢)