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フランスの普仏戦争時にパリ・コミューンに属していたと考えられるバベットが、パリの晩餐を理解できない片田舎で、その芸術性を披露する。

料理は重要ではない。

小説「バベットの晩餐会」では、バベットが過去を語る中で歴史上の人物たちが登場するが、パリの住民が組織した抗戦団体パリ・コミューンで、彼女の芸術を保護してくれた宮廷や貴族、文化人たちを敵にまわした。

それは、「労働者として戦うべき」という決意からであり、彼女が「カフェ・アングレ」のシェフを務めていた時代の「顧客」のひとりで、彼女の芸術性を理解していたガリフェ将軍に、追われる立場になる。

カフェ・アングレ(Café Anglais)は、バルザックの「ゴリオ爺さん」( Le Père Goriot)、「幻滅」(Illusions perdues)、そしてフローベルの「感情教育」(l'Éducation sentimentale)にも、この「カフェ・アングレ」が使われている。

実際の19世紀にはスタンダール(Stendhal)、ミュッセ(Alfred de Musset)、アレクサンドル・デュマ(子: Alexandre Dumas)、ユージェーヌ・シュー(Eugene Sue)などのフランスの作家も常連だった。

現在は「トゥール・ダルジャン」(Tour D`Argent)として引き継がれている。



晩餐会の提案をするバベット


晩餐のあと、バベットは姉妹に言う。「あの方々は(←ガリフェ将軍や宮廷の人々)、おふたりに理解することも信じることもできないほどの費用をかけて、育てられ躾けられてきたのです。わたしがどれほど優れた芸術家であるかを知るために。」

あるとき、バベットが留守中に姉妹はいつも食事を施している人々にスープを届ける。それこそ貧しい彼らたちのほうが、その味の違いをその目で判断できた。

たとえ貧しい食材でも、14年間もバベットの作った料理を口にしていた姉妹。姉妹はその味わいよりも、貧しい人々に施している、バベットのスープの不思議な活力と治癒力に驚いていた。

芸術とは何か。

この物語の前半に登場するオペラ歌手アシーユ・パパンが、その答えを彼女に渡したとも言える。



マーチーネ(Vibeke Hastrup ヴィーベケ・ハストルプ)
フィリパ(Hanne Stensgaard ハンネ・ステンガード)


バベットを演じたステファーヌ・オードラン(Stéphane Audran)は、ヌーヴェルヴァーグ(Nouvelle Vague)といわれるフランスの映画運動に馴染みがある一人。

時代は19世紀。プロテスタントの監督牧師の娘のマーチーネ(ヴィーベケ・ハストルプ Vibeke Hastrup/ビルギッテ・フェダースピール Birgitte Federspiel)とフィリパ(ハンネ・ステンガード Hanne Stensgaard/ボディル・キュアBodil Kjer) は美しい姉妹。一人は士官、一人はオペラ歌手と恋をするが、ノルウェーの山麓にある片田舎の清廉な人々の日常は、彼らをこの地に留まらせることができなかった。



姉妹の父 監督牧師


映画の前半は、その村と牧師の父、そして若い姉妹と恋人たちの出会いなどを描いているが、後半のバベットが登場する。1871年に、彼女たちの家に住むことになったバベットの本当の理由が、この前半にある。

1871年、フランスはナポレオン3世と后妃ウジェニーが、英国へ亡命したときでもある。普仏戦争のあと廃位となったからだ。つまりバベットは皇后陛下同様に亡命しなければならなかった。

フランス軍はプロイセンの支援を得て、パリ・コミューンを粛清したからだ。フランス人によるフランス人への鎮圧。フランス革命と一緒。



17年前に監督牧師の家にいた15歳の家政婦


17年前の監督牧師の家には美しい姉妹のほか、15歳の家政婦が一人いた。そしてレーヴェンイェルム夫人のもとに、享楽三昧の将校ロレンスが預けられる。物語では姉マーチーネ(小説ではマチーヌ)に恋をし、告白することができずに軍人として晴れがましい人生を歩む決意をする。



ロレンスが去ったあとの姉妹


そしてロレンスはベアレヴォーを去り、昇進と果たし、スウェーデンのソフィア王妃の侍女と結婚する。史実にあわせればスウェーデン王グスタフ3世の王妃ソフィア・マグダレーナの侍女ということだろうか。

さて、その一年後にパリの有名なオペラ歌手アシーユ・パパン(カトリック教徒)がベアレヴォーにやってきた。監督牧師はプロテスタントであるから、このカトリック教徒を受け入れるには恐れ慄くことだが、フィリッパは彼のレッスンを受け始めた。



ドン・ジョヴァンニとツェルリーナのレッスンで額にキスされたフィリッパの硬い表情


ムッシュ・パパンはフィリッパとパリ・オペラ座でのデュエットを夢見ていた。彼はオペラ界の著名人であり、大きな世界を知っているムッシュ・パパンは、この小さな敬虔なベアレヴォーの村では、その偉大な芸術性が、認められなかった。

ベアレヴォーの村では才能よりも、「良き人々」であることが何よりもすばらしいことだから。



マーチーネ(ビルギッテ・フェダースピール Birgitte Federspiel)
フィリパ(ボディル・キュアBodil Kjer)


このマーチーネ(マチーヌ)とフィリッパの姉妹は、パリの洗練されたファッションもディナーも知らない。知ろうともしない。それが美徳なのか?僕は、ただ自分たち以外の者を排除している気がしてならない。

彼女たちは、贅沢三昧の食事、パリでの蛙を食することに嫌悪している。

ところが父の生誕100年を記念した晩餐会に、本物のフランス料理をつくりたいとバベットは言う。

映画「バベットの晩餐会」  A Festa de Babete/Babettes Gaestebud(film)

はじめの物語
Babette's Feast 01
Babette's Feast 02
Babette's Feast 03

バベットの登場
Babette's Feast 04
Babette's Feast 05


バベットが選んだ食材の到着
Babette's Feast 06


デリカテッセンのようなシーン (牛の頭とか)、料理の仕込み、テーブルセッティングの場面
Babette's Feast 07

晩餐会のはじまり、はじまり〜
Babette's Feast 08
Babette's Feast 09


晩餐会のあと
Babette's Feast 10

さて、バベットは心のこもった料理をつくっただろうか?

僕はこの映画から、そして原作から、それはないと感じている。ただただ、彼女の芸術作品を堪能できるものだけが、その素晴らしさを味わったのだ。それで何か世界観が変わっていく。

たった一人、マーチーネ(マチーヌ)の世界観は変わらない。亀を見たからかもしれないけど。



海がめのスープになる海亀くん


この巨大な亀をみてしまったマーチーネ(マチーヌ)。晩餐が始まる前に年老いた信者たちに何を食べさせられ、何を飲ませられるかわからない不安を話し、彼らは料理のなまえを一切口にしないことを約束する。

マーチーネ(マチーヌ)は届いた瓶の中身を尋ねる。

バベットは「ワインですって?とんでもない。クロ・ヴージョの1846年ものですよ。モン・オルジェイ街の店フィリップの品なのです。」

聞いたこともない名前に黙るマーチーネ(マチーヌ)。プロテスタントの世界観とパリの美である文化芸術との対立でもある。


カレン・ブリクン(イサク・ディーネセンもしくはアイザック・ディネーセン)の「バベットの晩餐会」では、「一万フラン」がすべて父の生誕100年を記念した晩餐会に使われたことに、父の友人の話を思い出す。

それは、黒人の王の治癒をした伝道師に、敬意をあらわすために、王の幼い孫を料理した晩餐会の話である。社会的カニバリズムの話だが、わざわざ黒人としているところが憎らしいが。

その王とバベットが重なり、身震いするマーチーネ(マチーヌ)。彼女は決して変わらない。頑迷な心。


バベットは言う。「みなさんのため、ですって?」

「わたしのためです。わたしはすぐれた芸術家なのです。」

「すぐれた芸術家が貧しくなることはないのです。みなさんにはどうしてもお分かりいただけないものを持っているのです。」

「ムッシュ・パパンもそうでした。」

「あの方がご自分から、この話をしてくれたのです。次善のものに甘んじて満足せよなどといわれるのは、芸術家にとって恐ろしいこと。耐えられぬこと。次善のことで喝采を受けるのは恐ろしいこと。芸術家の心には、自分に最善を尽くさせてほしい、機会を与えてほしい。世界中に向けて出される長い悲願の叫びがあるのだと。」

彼女がここに来たのは、そういうことだったのだ。彼女が料理をつくっているのは、誰かのためにではなく、自分のために、相手が満足する芸術品を創るためなのだ。


それが理解できるのが、フィリッパ。モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」(Il dissoluto punito, ossia il Don Giovanni)のレッスンでのムッシュ・パパンの額のキスの意味もわかったのではないだろうか。

パリのオペラ座を選択しなかったのはフィリッパ自身。決して神の意思ではない。

この作品「バベットの晩餐会」での賛美歌の詩と、ドン・ジョバンニの放蕩者ドン・ファンの詩が対照的に描かれている。

対立であり、共存であるキーワードが、この作品にはめいっぱい盛り込まれている。

そして「カフェ・アングレ」には、「料理界のモーツァルト」(mozart de la cuisine)と呼ばれたシェフのアドルフ・デュグレレ(Adolphe Dugléré 1805-1884 )がいた。ロシア皇帝アレクサンドル2世、アレクサンドル3世、ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世、宰相ビスマルクらは、料理の芸術家の作品を口にしたわけだ。

最後にバベットを心からすぐれた芸術家と賞賛し、抱きしめるのは、妹のフィリッパだけだ。

ムッシュ・パパンとのレッスンに、モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」をあてたのは、賛美歌だけではなく、シェフのアドルフ・デュグレレを指し示していたのかもしれないな。



キャビアをのせたブリニのデミドフ風


僕はこの映画も、原作も読んでいる。なぜか、この映画を扱っている記事に多いのが、「心のこもった料理で人を幸せにする」という解釈だが・・・。

それは違うだろう。

「我に最善を尽くす機会を与えよ」

それを求めてきたバベット。これが主題ではなかろうか?



 アモンティヤードのシェリー(Amontillado)


この映画にでてくる、食前酒、ワイン、コニャックは、 アモンティヤードのシェリー(Amontillado)、ヴーヴ・クリコ 1860(Veuve-Clicquot 1860)、ルイ・ラトゥール クロ・ヴージョ 1845(Louis Latour Clos Vougeot 1845)、ハイン コニャック(Cognac Hine)だ。

この晩餐会には、貴族、ブルジョワジー、プロレタリアート(労働者)が揃う。唯一の貴族階級が、ロレンスと大叔母レーヴェンイェルム夫人。

当然、ロレンスは最高の料理も、お酒も、そしてガリフェ将軍も、カフェ・アングレも、女性シェフの評判までも知っている。

バベットの晩餐会では、メニューを一人で語っている。

「不思議だ。アモンティラードではないか?」
「正真正銘の海亀のスープだ。」
「これはまさしくブリニのデミドフ風ではないか!」
「これは1860年もののクリコですな。」

そしてガリフェ将軍が教えてくれた「カーユ・アン・サルコファージュ」が登場する。うずらの石棺風パイ詰めのことだ。そして葡萄に桃に無花果。

ここにポム・ド・テール・アンナ(Pommes Anna)がデザートだったら面白いのにな。ベタなつっこみになるかも。カフェ・アングレのシェフだったアドルフ・デュグレレが、当時の女優アンナ・デリヨン(Anna Deslions)に捧げたもの。

この映画では、季節のサラダ、チーズの盛り合わせ、スポンジケーキにコーヒー、ハイン コニャックまででてくる。




季節のサラダ?




アビランドの食器にカーユ・アン・サルコファージュ、1860年もののクリコ



厨房で試飲、試食をしながらお手伝い


この「バベットの晩餐会」が真作だとすると、芸術品だから贋作もつくられた?いろんなレストランでバベットのメニューを宣伝してた。アホらし。

さて、この作家名も複雑なんだけど、先にこの「バベットの晩餐会」は、英語版とデンマーク語版には、かなりの違いがある。

僕が読んだものは、デンマーク語版で、ギュルンデール社出版の「運命諺」にある「バベットの晩餐会」の邦訳。

英語版にはない描写があると「あとがき」にあった。

だから邦訳やデンマーク語じゃなくて、英語版でスラスラ読んだ人には、?という場面もあったかも。

| 映画 | 01:23 | trackbacks(3)



New Trinity Baroque


楓の記事でヴィヴァルディの四季から、いろいろ検索してこの動画にたどりついた。このながーい、長い拡張弦。ニュー・トリニティ・バロックのマイケル・フィールズ (Michael Fields)の弾く楽器が「アーチリュート(Archlute)」だ。はじめて演奏するところを見た。

Vivaldi Lute Concerto in D major アーチリュート演奏
(第1楽章:アレグロ・ジュスト、第2楽章:ラルゴ、第3楽章:アレグロ)

動画はヴィヴァルディの「リュート協奏曲 ニ長調 RV.93」。この曲は、ヴィヴァルディがどのリュートを想定したかはっきりしていない。

Antonio Vivaldi - Concerto for Lute in D Major RV 93 リュート演奏
リュートと2つのヴァイオリンのための協奏曲D-dur RV.93

このほかに、ヴィヴァルディはリュートのためのトリオ、ヴィオラ・ダモーレとの協奏曲を書いている。

リュートとヴィオラ・ダモーレのための協奏曲d-moll RV.540
リュート、ヴァイオリンと通奏低音のためのトリオC-dur RV.82
リュート、ヴァイオリンと通奏低音のためのトリオg-moll RV.85

ちなみにヴィオラ・ダモーレは
Vivaldi Concerto for Viola d'amore in D major, RV392
ヴィオラ・ダモーレ協奏曲ニ長調RV.392(第1楽章:アレグロ、第2楽章:ラルゴ、第3楽章:アレグロ)


ステファン・ゴットリーブ(Stephen Gottlieb)の制作によるアーチ・リュート。wikiでみたら、「アーチリュートは歴史上、まずリュート・アティオルバートとして現れたとされる。」、「アーチリュートの名称は1680年頃から用例が増えている。ここでアーチリュートと呼ばれているのは、テオルボに代わる通奏低音楽器として広まったもの。」とある。

さらに、「リュート・アティオルバート用と思われるソロ作品が17世紀前半に多く残されているが、アーチリュートとリュート・アティオルバートは同じ調弦を持つので、アーチリュートでも演奏可能」とあった。

アレッサンドロ・ピッチニーニ(Alessandro Piccinini, 1566 - 1638)は、同時代のジョヴァンニ・ジローラモ・カプスペルガーとともに、リュート、テオルボの名手として知られた人。

彼の著作タブラチュア集の「アーチリュート、およびその発明者について(dell'Arciliuto & Inuentore di esso)」のなかで、「アーチリュート(リュート・アティオルバート)の発明者」と述べている。wikiによると、「リュート・アティオアルバート」(Liuto attiorbato「テオルボ化されたリュート」) の呼称はミスリーディングであり、アーチリュート Arciliuto と呼ぶべきであると主張しているらしい。

テオルボ・リュート(Theorbo-Lute)



A woman Playing the Theorbo-Lute and a Cavalier
Gerard ter Borch  Metropolitan Museum of Art


この作品は・テル・ボルフの「リュート-テオルボとカヴァリエを弾く女」(メトロポリタン美術館)だけれど、外側にそったリュートのネックと内側にそったテオルボのネックが合体した感じ。

絵画作品には、、「リュート・アティオアルバート」(Liuto attiorbato:テオルボ化されたリュート) ではなく、多数の「テオルボ・リュート」(Theorbo-Lute) という楽器が描かれている。バロック・リュートの親戚?

baroque lute

バロック・リュート(baroque lute)


wikiによると、「様々な拡張バス付きリュート族の楽器が存在していたことがわかる。」とあった。

Jakob Lindberg

Theorbo-Lute by Jakob Lindberg


僕が別ブログで、ヘラルト・テル・ボルフ(ヘラルト・テルボルフ) Gerard ter Borch IIの作品をアップしたが、そこにはリュート、テオルボ・リュートが描かれているが、ルーヴル美術館所蔵の「演奏会、歌手とテオルボを弾く女」(ヘラルト・テル・ボルフ)は、いまになって、「テオルボ・リュート」(Theorbo Lute )ではないかと思った。

ヤコブ・リンドベルイ (Jakob Lindberg)の テオルボ・リュート(Theorbo-Lute)の演奏はこちら。

リュートとヴィオラ・ダモーレのための協奏曲d-moll RV.540

PICCININI Toccata
曲はアレッサンドロ・ピッチニーニ(Alessandro Piccinin :1566-1638?)のトッカータ。

テオルボ(Tiorba)

Lady Wroth holding a theorbo (c. 1620) attributed to John dc Critz (1555-1641

Lady Mary Wroth (1587–1651/3)
レディー・メアリー・ ロースとテオルボ(部分)
ジョン・デ クリッツ (John de Critz)


これは絵画に描かれたテオルボ。レディー・メアリー・ ロースはルネサンス期の英国詩人。wikiによると、エミリオ・デ・カヴァリエーリが1600年にローマで上演した「魂と肉体の劇」(Rappresentatione di Anima, et di Corpo...) では、「キタローネまたの名をティオルバ」(un Chitarone, ò Tiorba che si dica) が用いられたと記録されている、1600年の時点でtiorba(ティオルバ=テオルボ)の呼称が用いられている、とあったので、「レディー・メアリー・ ロースとテオルボ」の肖像画は、その証明でもある。



テオルボ(Tiorba)?


テオルボの演奏は、「ヴィオラ・ダモーレ協奏曲ニ短調RV.394」から、。

Vivaldi Concerto for Viola d'amore in D minor, RV394

Fabio Biondi (Viola d'amore)
Andrea Rognoni, Fiorenza De Donatis (Violins)
Stefano Marcocchi (Viola)
Maurizio Naddeo (Violoncello)
Patxi Montero (Violone)
Giangiacomo Pinardi (Theorbo)
Paola Poncet (Harpsichord & Organ)

最後はリュート・アティオアルバート(Liuto attiorbato)

liuto attiorbato

liuto attiorbato




ナイジェル・ノース (Nigel North)


リュート族ならなんでも弾けるナイジェル・ノース (Nigel North)は、「マウリシオ・バビロニア(Mauricio Babilonia)」を、このリュート・アティオアルバート(Liuto attiorbato)で弾いている。バロックリュート、テオルボ、リュートと彼が参加している曲は多い。

Mauricio Babilonia 

もう一人はルーカ・ピアンカ(Luca Pianca)。


Telemann - Quatuor Parisien N°12 (Chaconne) / Il Giardino Armonico 

右がルーカ・ピアンカ、左のヴィオラ・ダ・ガンバは、ヴィットリオ・ギエルミ (Vittorio Ghielmi)。曲はG.P.テレマン 新四重奏曲第6番(パリ四重奏曲第12番)ホ短調。

Il Giardino Armonico

Giovanni Antonini (flauto traverso)
Enrico Onofri (violino)
Vittorio Ghielmi (viola da gamba)
Luca Pianca (liuto attiorbato)
Ottavio Dantone (clavicembalo)

Directed by Giovanni Antonini
Performed by Il Giardino Armonico
(On period instruments / Historically informed performance )

from the DVD ' Music of The French Baroque

イル・ジャルディーノ・アルモニコ( Il Giardino Armonico)はイタリアの古楽アンサンブル。ジョヴァンニ・アントニーニ(Giovanni Antonini )とルーカ・ピアンカが結成した。主に17世紀や18世紀以前の音楽を演奏している。



バロックの踊り サラバンド を踊るカスパー・マインツ 
音楽 イル・ジャルディーノ・アルモニコ


Baroque Dance - Sarabande / Il Giardino Armonico
Baroque Dance - Menuet / Il Giardino Armonico

残念ながら、ここにはルーカ・ピアンカだけがいない。後ろで演奏しているのが、イル・ジャルディーノ・アルモニコ。

Rameau - Pièces de clavecin en concert N° 3 (Tambourin) / Il Giardino Armonico
Rameau - Pièces de clavecin en concert N° 5 (La Marais) / Il Giardino Armonico 
Rameau - Pièces de clavecin en concert N° 5 (La Cupis) / Il Giardino Armonico
Rameau - Pièces de clavecin en concert N° 5 (La Forqueray) / Il Giardino Armonico

イル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏は、ラモーのクラヴサン合奏集から。

Dieupart - Les Six Suites, 1701 / Suite N°6, Allemande (Il Giardino Armonico / Giovanni Antonini)
Dieupart : Les Six Suites, 1701 - Suite N°6, Courante / Ottavio Dantone (harpsichord)

イル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏は、シャルル=フランソワ=デュパールの6つの組曲から。 

| MUSIC | 20:04 | trackbacks(1)

ご存知エルガーの威風堂々。

アマチュアも含めてたくさんあった「威風堂々」の第1番のなかで、いちばんいいかなって思ったのが、ベルリン・フィルハーモニー。

Preformed By the : Berlin Philharmonic
Conducted By : Daniel Barenboim
Edward Elgar - Pomp And Circumstance, March No.1 In D

第1番の中間部の旋律は「希望と栄光の国」(Land of Hope and Glory)と呼ばれている。

この旋律を1931年に作曲者サー・エドワード・ウィリアム・エルガー(Sir Edward William Elgar)の指揮によるの動画を見つけた。このあとに続く演奏は1987年にアンドレ・プレヴィン(André Previn)の指揮によるロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(Royal Philharmonic Orchestra)となっている。

Elgar - Pomp and Circumstance March No 1

追記
サー・エドワード・ウィリアム・エルガー(Sir Edward William Elgar)の指揮でBBC交響楽団の演奏。HMVのレコード。

Recorded by HMV Studios : Abbey Road, London
Preformed By the : BBC Symphony Orchestra
Conducted By : Sir Edward William Elgar

Pomp & Circumstance - Edward Elgar


この旋律は英国のロイヤル・ウエディングにも演奏されており、エルガーの曲は元ダイアナ妃、そしてウィリアム王子とキャサリン妃の式にも奏でられた。

この「威風堂々」は、パイプオルガンや管弦楽用の鈴、ハープ2台が第1番の楽器編成に含まれている。忠実な演奏を聴いてみたいものだ。

楽器構成のトライアングルの音が聞こえるのは次の動画。

Elgar - Pomp And Circumstance No. 1 In D Major

全曲はこちらから。行進曲「威風堂々」作品39 (リンク先直したから。)

第1番ニ長調 1901年
Elgar - March No. 1 - Pomp and Circumstance Military Marches
第2番イ短調 1901年
Elgar - March No. 2 - Pomp and Circumstance Military Marches
第3番ハ短調 1905年
Elgar - March No. 3 - Pomp and Circumstance Military Marches
第4番ト長調 1907年
Elgar - March No. 4 - Pomp and Circumstance Military Marches
第5番ハ長調 1930年 ずいぶん期間があいてる。70歳すぎの作品
Elgar - March No. 5 - Pomp and Circumstance Military Marches

エルガーが完成させたのは5曲。遺稿となった未完の第6番がアンソニー・ペイン(Anthony Payne)によって補筆されて完成となった。

wikiによると「補筆版は1996年に大英図書館で発見された主要主題を含む草稿と、大英図書館所蔵の手稿譜を元に2005年から2006年にかけて補筆完成」とあった。

第6番(遺作)ト短調 アンソニー・ペイン補筆2005-2006
ELGAR - POMP AND CIRCUMSTANCE MARCH NO.6.wmv

知ってのとおり、「Pomp and Circumstance 」(威風堂々)というタイトルが、シェイクスピアの「オセロ」第3幕第3場の台詞から取られているとなっている。

オセロはツィンツィオの「百物語」第3篇第7話("Un Capitano Moro" ("A Moorish Captain") by Cinthio)がネタ。

この「オセロ」を元にした音楽作品とも言われている。本来は軍の儀仗演奏用の曲としてエルガーが作曲したものだから、キプロスの軍隊の指揮官で気高きムーア人オセロから準備したのだろうか。

だがこのセリフ自体は、讒言を見抜けなかった男の嫉妬のセリフである。

オセロが書かれた当時、英国のキリスト教とモロッコのイスラム教が、互いに異教でありながら貿易を開始した。

英国に滞在したモロッコの大使は、このシェークスピアの1602年の作「オセロ」(Othello)の副題である「ヴェニスのムーア人」(The Moor of Venice)だった。

異境で異教のモロッコ大使と、異境で異教の将軍オセローは、その異境の地におけるたった一人の異邦人なのだ。

一人の異邦人が異境の地で、悪意に見舞われるのは容易いことだろう。ゲーム「オセロ」の名の由来にもなったオセローは、白人ばかりのヴェニスで、肌の黒いムーア人だったわけだ。

オセローは、イアーゴの嫉妬の悪巧みにまんまとはまる。そしてイアーゴの讒言に対してのオセロのセリフに、「輝かしい戦いの盛儀盛宴(Pomp and Circumstance)」がでてくる。

O, now, for ever
Farewell the tranquil mind! farewell content!
Farewell the plumed troop, and the big wars,
That make ambition virtue! O, farewell!
Farewell the neighing steed, and the shrill trump,
The spirit-stirring drum, the ear-piercing fife,
The royal banner, and all quality,
Pride, pomp and circumstance of glorious war!
And, O you mortal engines, whose rude throats
The immortal Jove's dead clamours counterfeit,
Farewell! Othello's occupation's gone!

(オセロ 第3幕第3場 Act III, Scene III of Shakespeare's Othello)

「Farewell」(フェアウェル)はフランス語の「Adieu」(アデュー)と同じ響きをもつ。今生の別れの言葉だ。「Farewell」のもつ意味 「さらば、ごきげんよう」という告別である。

Pride, pomp and circumstance of glorious war!
「輝かしい戦いの誇りに、称誉の盛儀盛宴よ!」といったところだろうか。

「威風堂々」は「威風堂々たる陣容」という邦題だった。「輝かしい戦いの盛儀盛宴」を「軍隊の構え」を強調している。だが、盛儀盛宴とは戴冠式の儀式や国賓の歓迎式典、そして祝いの祝典の晩餐を意味している。

その儀式の装飾する武具と武器、儀礼と護衛のための儀仗兵の美しく正確な陣取りが、栄光の象徴でもあり軍人の誇りでもある。オセローは、その栄光と誇りに決別するほどの落胆を、イアーゴの悪巧みで打撃を受け、エルガーはその「栄光と誇り」を強調したのだから、威厳が満ちあふれた様をあらわす四文字熟語の「威風堂々」も誤用にはならないというのが僕の解釈。名訳中の名訳と思ってるからさ。

さて、エドワード7世からの歌詞の要望により、1902年に国王のための戴冠式頌歌(Coronation Ode)を作曲、第7番目の終曲「希望と栄光の国(Land of Hope and Glory)」にこの行進曲を用いた。歌詞は詩人アーサー・クリストファー・ベンソン(Arthur Christopher Benson )によるもの。

Land of Hope and Glory(もちろん合唱つき)

儀式の装飾する武具と武器、儀礼と護衛のための儀仗兵と書いたが、ロンドン バッキンガム宮殿の黒い帽子に赤い軍服の近衛騎兵隊「ホースガーズ」はそのものだね。

200年には満たないが、歴史は古い近衛軍楽隊(コールドストリーム・ガーズ・バンド )は、王室の公式行事にかかせない存在でもある。

戴冠式頌歌(Coronation Ode)の終曲「希望と栄光の国(Land of Hope and Glory)」の演奏をコールドストリーム・ガーズ・バンド (The Band of the Coldstream Guards)のものを発見したついでに、第1-第6までの試聴先もゲット。

Coronation Ode, Op. 44

"Crown the King"I
"Crown the King" - Introduction Soloists and Chorus

エルガー:戴冠式頌歌 無料体験で試聴できる

Crown the King with Life!
    Through our thankful state
    Let the cries of hate
    Die in joy away;
Cease ye sounds of strife!
    Lord of Life, we pray,
Crown the King with Life!

Crown the King with Might!
    Let the King be strong,
    Hating guile and wrong,
    He that scorneth pride.
Fearing truth and right,
    Feareth nought beside;
Crown the King with Might!

Crown the King with Peace,
    Peace that suffers long,
    Peace that maketh strong,
    Peace with kindly wealth,
As the years increase,
    Nurse of joy and health;
Crown the King with Peace!

Crown the King with Love!
    To his land most dear
    He shall bend to hear
    Ev'ry pleading call;
Loving God above,
    With a heart for all;
Crown the King with Love!

Crown the King with Faith!
    God, the King of Kings,
    Ruleth earthly things;
    God of great and small,
Lord of Life and Death,
    God above us all!
Crown the King with Faith!

God shall save the King,
    God shall make him great,
    God shall guard the state;
    All that hearts can pray,
All that lips can sing,
    God shall hear today;

Crown the King with Life
    with Might, with Peace, with Love, with Faith!

God shall save the King,
    God shall make him great,
    God shall guard the state;
    All that hearts can pray,
All that lips can sing,
    God shall hear today;
God shall save the King!



(a) "The Queen" (b) "Daughter of ancient Kings"II - (a) "The Queen" - Chorus

エルガー:戴冠式頌歌 無料体験で試聴できる

True Queen of British homes and hearts
    Of guileless faith and sterling worth,
We yield you ere today departs,
    The proudest, purest crown on earth!

We love you well for England's sake,
    True you shall prove, as you have proved;
The years that come shall only make
    Your name more honoured, more belov'd.

Oh kind and wise, the humblest heart
    That beats in all your realms today
Knows well that it can claim its part
    In all you hope, in all you pray.


II - (b) "Daughter of ancient Kings" - Chorus "A Greeting to Her Gracious Majesty, Queen Alexandra"

    Daughter of ancient Kings,
    Mother of Kings to be,
Gift that the bright wind bore on his sparkling wings,
    Over the Northern sea!

    Nothing so sweet he brings,
    Nothing so fair to see,
Purest, stateliest, daughter of ancient Kings,
    Mother of Kings to be!



 "Britain, ask of thyself"III "Britain, ask of thyself" 
Solo Bass and Chorus (Tenor and Bass)

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Britain, ask of thyself, and see that thy sons be strong,
    See that thy sons be strong,
    Strong to arise and go,
    See that thy sons be strong,

See that thy navies speed, to the sound of the battle-song;
    Then, when the winds are up, and the shuddering bulwarks reel,
    Smite, the mountainous wave, and scatter the flying foam,
    Big with the battle-thunder that echoeth load, loud and long;

Britain, ask of thyself, and see that thy sons be strong,
    See that thy sons be strong,
    Strong to arise and go,
    If ever the war-trump peal;

See that thy squadrons haste, when loos'd are the hounds of hell;
    Then shall the eye flash fire, and the valourous heart grow light,
    Under the drifting smoke, and the scream of the flying shell,
    When the hillside hisses with death, and never a foe in sight.
    Britain, ask of thyself, and see that thy sons be strong.

So shall thou rest in peace, enthron'd in thine island home.
    So shall thou rest in peace,
    Enthron'd in thine island home,
    So shall thou rest in peace, enthron'd in thine island home.

Britain, ask of thyself,
    Britain, ask of thyself, see that thy sons be strong,
    Strong to arise, arise and go, see that thy sons be strong.
    See that thy sons be strong,
    Strong to arise and go, if ever the war-trump peal!



(a) "Hark, upon the hallowed air" (b) "Only let the heart be pure"IV
(a) "Hark, upon the hallowed air" - Soli (Soprano and Tenor)

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Tenor
Hark, upon the hallow'd air,
    Spirits pure of sight and sense,
Hov'ring visions, rich and fair,
    Lend their radiant influence!
Airy powr's of Earth and Sky
Bless our meet solemnity.

Soprano
Music, sweetest child of heav'n,
    At thy touch the heart is free,
Ancient wrongs by thee forgiv'n,
    Cares uplifted, heal'd by thee,
Listen smiling, borne along
In the sacred, sacred tide of song.

Tenor
Music, music of the poet's heart!
    Widening yet the echoes roll;
Fiery secrets, wing'd by art,
    Light the lonely list'ning soul,
Till the aching silence rings
With the beat of heav'nly wings.

Soprano
Magic web of woven hues,
    Tender shadow, linked line,
Sweet mysterious avenues
    Opening out to Light Divine!
Painter-poet, thou canst teach
More than frail and falt'ring speech.



IV (b) "Only let the heart be pure" - Quartet (S.A.T.B.)

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Only let the heart be pure,
    Pure in steadfast innocence,
Stainless honour, strong and sure,
    Stem the ardent tide of sense!

So shall Wisdom, one with Truth,
    Keep undimm'd the fires of youth,
Strong to conquer, strong to bless,
    Britain, Heaven hath made thee great!

Courage knit with gentleness,
    Best befits thy sober state.
As the golden days increase,
    Crown thy victories with peace!



"Peace, gentle peace"V "Peace, gentle peace" 
Soli (S.A.T.B.) and Chorus unaccompanied

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Peace, gentle Peace, who, smiling through thy tears,
Returnest, when the sounds of war are dumb ...
Our earth is fain for thee! Return and come.



"Land of hope and glory"VI - "Land of hope and glory" - Finale (Contralto Solo and Tutti)

コールドストリーム・ガーズ・バンド (The Band of the Coldstream Guards)の演奏
Land Of Hope & Glory - Heroes - The Coldstream Guards

Solo   
    Land of hope and glory,
        Mother of the free,
    How shall we extol thee,
        who are born of thee?
    Truth and Right and Freedom,
        each a holy gem,
    Stars of solemn brightness,
        weave thy diadem.

Chorus
    'Tho thy way be darken'd,
        still in splendour drest,
    As the star that trembles
        o'er the liquid West.
    Thron'd amid the billows,
        thron'd inviolate,
    Thou hast reign'd victorious,
        thou hast smil'd at fate.

Soloists and Chorus
    Land of hope and glory,
        Fortress of the free,
    How shall we extol thee?
        praise thee, honour thee?
    Hark! a mighty nation
        maketh glad reply;
    Lo, our lips are thankful;
        lo, our hearts are high!
    Hearts in hope uplifted,
        loyal lips that sing;
    Strong in Faith and Freedom,
        we have crowned our King!


wikiによると、「BBCプロムスなどにおける演奏がBBCで放映される際には、歌曲の最初の部分においてエリザベス2世女王の映像が必ず流されることとなっている。」とあった。
| MUSIC | 18:10 | trackbacks(1)
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