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英米文学者で東京大学教授で翻訳家で小説家の柴田元幸氏。



風強く 客もなきはず 冬の夜 ベルは鳴れども 人影皆無 


この人の翻訳で、エドワード・ゴーリーの「うろんな客」が印象的だった。あまりにもセンスがよくって柴田元幸氏の「うろんな客」にエドワード・ゴーリーが挿絵にしたってほど、エドワード・ゴーリーを喰ってしまったと思う。

The Doubtful Guest by Edward Gorey

夜明くれば 朝餉の席に加わりて パンに皿まで 牛飲馬食


本当に普通に訳せば「翌朝、朝食の席に加わってシロップとトーストを平らげ、おまけに皿まで食べていた。」という感じ。

カフカの「変身」のザムザと違い、「胡乱」でありながら自由であり、居場所がある。

20世紀文学のフランツ・カフカの「変身」(Die Verwandlung)は、グレゴール・ザムザが朝、目が覚めると一匹の巨大な虫に変身していた。家族はパニックになり、自室へ軟禁し、食事と掃除だけの世話を続けるだけで、最後息絶えた彼に家族としての慈しみも悲しみもない。

自分が人間だった頃。ザムザ氏の家族への愛情。

自分が人間だった頃、といえば少年ジャンプの「暗殺教室」の殺先生はどうか。タコとして描かれている「うろんな教師」だが。同じく「トリコ」に登場するGTロボ、「ニトロ」によく似ている。



新しき 蓄音機から喇叭取り なだめすかせど 馬耳東風




ともすれば 訳のわからぬ むかっ腹 風呂のタオルを 一切隠蔽


韻文の原文に短歌で翻訳。「うろん」は「奇妙な」の類義語で、この風変わりな物語にマッチしている。

Hoipolloi Gorey’s The Doubtful Guest

エドワード朝の一家とうろんな客の肖像画


何年かまえに、劇団ホイ・ポロイ(Hoipolloi)による「うろんな客」(The Doubtful Guest)をみた。

When they answered the bell on that wild winter night, There was no one expected -- and no one in sight

Then they saw something standing on top of an urn, Whose peculiar appearance gave them quite a turn.

All at once it leapt down and ran into the hall, Where it chose to remain with its nose to the wall.

It was seemingly deaf to whatever they said, So at last they stopped screaming, and went off to bed.

It joined them at breakfast and presently ate All the syrup and toast and a part of a plate.

It wrenched off the horn from the new gramophone, And could not be persuaded to leave it alone.

It betrayed a great liking for peering up flues, And for peeling the soles of its white canvas shoes.

At times it would tear out whole chapters from books, Or put roomfuls of pictures askew on their hooks.

Every sunday it brooded and lay on the floor, Inconveniently close to the drawing-room door.

Now and then it would vanish for hours from the scene, But alas, be discovered inside a tureen.

It was subject to fits of bewildering wrath, During which it would hide all the towels from the bath.

In the night through the house it would aimlessly creep, In spite of the fact of its being asleep.

It would carry off objects of which it grew fond, And protect them by dropping them into the pond.

It came seventeen years ago -- and to this day It has shown no intention of going away.

これだけの短い物語を時間をかけて演じてた。ある意味ではすごい。

胡乱(うろん)はご存知のように「正体の怪しく疑わしいこと」、「確かではないこと。真実かどうか疑わしいこと」だけど、この「胡乱な客」に、最後まで名はなかった。今では17年にもなるエドワード朝の一家との暮らしの中で。

名もない「うろんな客」は、居場所だけはあるようだ。

The Doubtful Guest, by Edward Gorey and 漫画家島袋光年「トリコ」

エドワード・ゴーリーの「うろんな客」
VS
少年ジャンプ 島袋光年 「トリコ」 ニトロ


やっぱり似てる。どちらもうろんな客だしね。

エドワード ゴーリー
コメント:柴田元幸氏の「うろんな客」にエドワード・ゴーリーが挿絵にしたってほど、エドワード・ゴーリーを喰ってしまったセンスの良い翻訳。

Edward Gorey
コメント:今日(2013.2.22)のGoogleロゴはエドワード ゴーリー生誕88周年。ナンセンスで不条理なストーリーと挿絵は大人の絵本かも。

| BOOK | 23:45 | trackbacks(0)

Políptico de Dino Valls titulado Psicostasia, del año 2005

多翼祭壇画 イブ(心臓)の計量 2005 ディーノ・バルス


スペインのリアリズム絵画のひとりディーノ・バルスは、医学と外科の学士号を取得している特殊な経歴の持ち主。

記事 ディーノ・バルス  子羊の解剖学講義

絵画の方は独学らしい。

心臓がマアトの羽根(真実の羽根)よりも重ければ貪り食う幻獣アメミットが右の犬の顔に書き換えられている。

中央では双子のような性別不明の二人が、羽を広げた白鳥なんだか白サギだか→トキかもに抱かれた図は、天使の羽にみえる。

エジプトの「死者の書」にある儀式だ。

Judgement of Osiris / the Weighing of the Heart

オシリスの審判/心臓の計量 大英博物館


冥界の神アヌビス (Anubis)がラーの天秤でマアトの羽根と心臓を量る。アマトが髪に飾るのは駝鳥の羽。

大英博物館のウォリス・バッジが翻訳したアニの「死者の書」は190章から成り、第125章にこの「審判」が書かれている。連れて来られたのは書記生アニ。

42柱の神々の前で42の罪の否定告白がはじまる。

天秤でマアトの羽根と心臓を量られたアニは、針が動くことなく真実と判定された。
追記 saiの記事(ディーノ・バルス その2 必然の女神ネケシタス)を読んで、あっ、やっぱ解読した方がいい?と思った。この記事を書くときには面倒だったので、ラテン語を見てみぬフリをしていた。


右側のラテン語は伝説の錬金術師クリスチャン・ローゼンクロイツ(Christian Rosenkreutz,1378-1484)の残した奥義だと思われる「Visita Interiora Terrae Rectificando Invenies Occultum Lapidem」と書かれていると思われた。

「地球の内部を調査せよ。汝、精溜により賢者の石を見出すだろう。」

でもよく観ると「Visita Interiora Terrae Rectificando Invenies OPΣRÆ(OPΣR/ß?) Lapidem」ってなってない?
さて、もう1枚。

BARATHRUM DINO VALLS

多翼祭壇画 絞首台 2003 ディーノ・バルス


絞首台の階段は十三階段。キリストの最後の晩餐の13人にちなんでいる。右翼、左翼の二人を含め描かれているのは子供を含めて12人の黒い運命。

15世紀のイタリアの画家ピサネロ(Pisanello)の「絞首刑」、16世紀のベルギーの画家ピーテル・ブリューゲル(Pieter Bruegel de Oude)の「絞首台のある風景」(1568)、失われたボッティチェッリのパッツイ家の晒し首吊りの壁画、レオナルド・ダ・ヴィンチの描いた「バルジェッロの窓の晒し首吊り」は有名。

記事 パッツイ家の陰謀 モンテフェルトロの陰謀 ジュリアーノ・デ・メディチの血の日曜日

ディーノ・バルスは「絞首刑の人道問題」にクローズ・アップしたのだろうか。絞首刑はもっとも残酷な処刑のひとつだから。

ディーノ・バルス関連記事 ラス・メニーナスがのぞいた国王夫妻

こんな作品もある sai記事 ルネサンスなディーノ・バルスの肖像画
| アート | 23:06 | trackbacks(0)

Dino Valls

ディーノ・バルス  べラスケスが描く国王夫妻の肖像画
女官たち(ラス・メニーナス)がのぞいた国王夫妻


この作品を描いたのがディーノ・バルス?

でも女の顔や乳がポロリと描いているのは、ディーノ・バルスに違いない。王女と女官たち(ラス・メニーナス)がのぞいた国王夫妻は、「ラス・メニーナス」に描かれていないベラスケスのキャンバスが、実は国王夫妻を描いているという主題だ。

ベラスケスの「ラス・メニーナス」では脇役で、鏡、あるいは小さな肖像画にちょっと描かれているだけだった。

実は国王夫妻が王女と女官たちを見ているのではなく、国王夫妻を王女と女官たちがのぞいていたわけか。

それも面白い。

ディーノ・バルスの医学生時代の作品なんだろうか?

追記 ラファエル前派っぽい作品もあった。→記事 ディーノ・バルス 物語画

| Las Meninas ラス・メニーナス | 19:21 | trackbacks(1)

ある空港でのこと。

仕事初めからクライアントと同行し、ラウンジで時間を過ごそうと思っていたところ、自動チェックイン機が近くにあり、何気に視線に入った人物に感じたのは「・・・誰だっけ?」。

でラウンジで休んで搭乗して無事着陸して、クライアントが手洗いに行っているときに、またその人物を見かけた。

「あれっ、〇〇じゃないか?」と僕。
僕に同行したスタッフは、「えっ!違うでしょ。後姿しかみえなかったですけど、〇〇より若い感じですよ。」

それっきりになった。

3週間ほどの出張で、帰国してからのこと。

〇〇室に〇〇がいたので、気軽に「〇日だったか、自動チェックイン機でみかけたのは、もしかして〇〇?」と聞いたら。

〇〇の顔が青くなった。

「誰にも言わないでください。お願いです。」と必死。

「う、うーん、わかったよ」と僕。

僕はあんまり、スタッフたちの出勤とか有休とか、あんまりチェックしていない。他のスタッフに任せている。

そんな僕がたまたま、ホントに偶然に目にしたのが〇〇の有休理由。あの日から5日間「インフルエンザ」で休みになっていた。唖然。

誰にも言わないでくださいだって?僕に知れたら一番まずいだろが?バカヤロー!

で、誰にも言わないでくださいって言われたから、言いたいけど言わない僕。それで記事にした。今回に限って見逃してやる。管理をまかせっきりにしていた僕の責任もあるし。

で、診断書どうしたんだよ。

| murmur | 16:22 | trackbacks(0)
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